段ボールでサーフボードの骨組みを作るという試みを実践するためには、まず材料となる段ボールが必要です。そこで、買い物をした際に梱包材として使われていたものを利用してみることにしました。
カッターナイフやハサミを使って、適当な大きさのパーツをいくつか切り出し、それらを組み合わせてみようと考えたのです。思いつくままに切り込みを入れ、パーツ同士を組み上げていきました。
作業を続けているうちに、いつの間にか夢中になり、ものを組み立てることそのものが楽しくなっていました。
しかし、その途中で、ふと疑問が湧きました。
パーツ同士を組み合わせる方法は、いったい何種類くらいあるのだろうか。
そして、どの組み方が最も強度を得られるのか。あるいは、強さを保ちながら柔軟性を生み出せる組み方もあるのだろうか。
ひとつの疑問から、さらに新しい興味が次々と湧いてきました。
いくつかの組み方を試したなかで、一般的に蜂の巣の構造として知られているハニカム状の組み方は、とても強度のある構造になりました。
その形をしばらく眺めていると、どこかで見たことがあるような気がしてきました。なかなか思い出せなかったのですが、よく考えてみると、犬との散歩で雑木林へ行った際、落ち葉を集めていた農家の方が背負っていた竹籠に似ていることに気が付きました。
その竹籠も、竹を規則的に組み合わせて作られていたのです。
その瞬間、思わず胸が熱くなりました。
私はそれまで、ハニカム構造というものは、航空機などに使われる現代の高度な技術の中で生まれたものだと思い込んでいました。
ところが、同じような考え方は、はるか昔から人々の日々の暮らしの中に存在し、そこで育まれてきたものだったのです。
「なんだ。これは最近になって生まれた技術ではなかったのか」
それまで別々に見えていた点と点が、突然一本の線でつながったように感じました。腹の底から突き上げてくるような興奮を覚えたことを、今でも鮮明に覚えています。
そして、ふと思いました。
「竹で編まれた籠やバッグは、用途に応じて、強度や柔軟性を考えた編み方が使い分けられているのではないか」
そこで、竹細工の歴史や編み方について、もう少し調べてみることにしました。
調べていくと、竹が自生するさまざまな国や地域では、数千年も前から、その用途に応じて竹を自在に編み、暮らしの道具を作っていたことが分かりました。
籠や器、運搬のための道具など、必要とされる役割に合わせて素材の特徴を理解し、編み方を工夫していたのです。
数千年前の人々も、より良い暮らしを求めて知恵を絞り、技術を磨き続けていた。その積み重ねが文化として今日まで受け継がれてきたことを思うと、深い感慨を覚えました。
ものを作るという行為は、単に必要な道具を生み出すことではありません。
素材を観察し、工夫し、試し、次の世代へと伝えていく。その繰り返しそのものが、人間の文化なのかもしれません。
さて、段ボールのパーツを組み合わせてサーフボードの骨組みを作るには、サーフボードに求められる特性についても考える必要がありました。
サーフボードには、波の力に耐えるための剛性が必要です。しかし、その一方で、適度な柔軟性も必要だといわれています。
波に乗って滑っているとき、水面の細かな凹凸によってボードが弾むことがあります。そのようなとき、ボードに適度な柔軟性があれば、受けた力を吸収し、乗り手に安定感をもたらしてくれるからです。
強いだけではなく、必要に応じてしなやかに動くこと。
その両方を満たす構造を考えた結果、私がたどり着いたのは、竹編みでいう「四ツ目編み」のような組み方でした。
格子状に組まれた構造は、強さを持ちながら、わずかに動く余地も残しています。
剛性と柔軟性。
一見すると相反する二つの性質を、ひとつの構造の中に共存させることができるのではないか。そう考えました。
こうして、サーフボードの骨組みに用いる段ボールパーツの組み方が決まりました。
現代の身近な素材である段ボールと、古くから人々の暮らしの中で受け継がれてきた竹編みの知恵が、私の中で静かにつながった瞬間でした。
しかし、組み方が決まっただけでは、まだサーフボードの形にはなりません。
次に考えなければならなかったのは、この格子状の構造を、どのようにしてサーフボードの滑らかな曲線へと変えていくのか、ということでした。
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