正しい道具を、正しい方法で使う

一度の失敗から、「正しい道具を、正しい方法で使う」ことの大切さを改めて知りました。より良い素材と道具を探し続けた先に、やがて何百年もの知恵を受け継ぐ職人との出会いが待っていました。

コアの材料として検討した二つの素材
ものづくりを進めるため、私はまず両手に収まるほどの大きさのサーフボードのコアを作り、それを切り出すことに成功しました。そして次はいよいよ、サーフボード特有の滑らかな曲線を削り出す工程へ進みました。

思い切ってディスクグラインダーを手に取り、慎重に作業を始めたその瞬間でした。一瞬にして、苦労して作ったコアの外周が吹き飛んでしまったのです。私は茫然と立ち尽くしました。

そのとき、オーストラリアの専門学校で教わった言葉が頭に浮かびました。

「正しい道具を、正しい方法で使う。」

難しい加工であっても、最適な道具を正しく使えば、安全で効率よく、そして美しく仕上げることができるという考え方です。また、授業では Occupational Safety(作業安全)についても学び、道具の正しい使い方、安全な作業環境、そして身を守るための保護具の重要性を繰り返し教えられました。

幸いにも今回は怪我をすることはありませんでした。しかし、この失敗を通して、安全と正しい作業方法の大切さを改めて思い出すことができたのです。

大きなハプニングではありましたが、私は試作品づくりを諦めませんでした。

軽量粘土では加工に時間がかかりすぎること、そしてサーフボードの曲線を削り出す素材として適していないことも分かりました。そこで、代わりになる素材をもう一度探し始めました。

ホームセンターを何軒も見て回り、「安価で手に入りやすく、軽くて加工しやすい素材」を考え続けた結果、候補は発泡スチロールとスタイロフォームでした。さらに調べると、発泡スチロールは水を吸収しやすい一方、スタイロフォームは水をほとんど吸収せず、適度な硬さもあるため削り出し加工に向いていることが分かりました。

「これだ。」

私は格子状のフレームの隙間をスタイロフォームで埋めることに決めました。

もう一度コアを作り直し、小さく切ったスタイロフォームを一つひとつ接着していきます。そして外形を切り出したあと、今度は電動工具を使わず、手作業で削ることにしました。

手元にあった棒ヤスリを使って慎重に削り始めると、少しずつ形になっていきます。夢中になって作業を続け、気がつけば二時間近くが過ぎていました。

しかし、出来上がった形は、費やした時間にまったく見合っていませんでした。

「これでは駄目だ。」

丁寧な仕事は大切です。しかし、効率が悪すぎれば完成にはいつまでたっても近づけません。

そのとき、ふと考えました。

「ヤスリにもいろいろな種類があるのではないか。この作業に最適なヤスリを使えば、もっと速く、もっと美しく削れるはずだ。」

私は、それまで何気なくヤスリを使ってきました。しかし、種類や用途については何も知らなかったのです。

だったら、本当にヤスリを知っている人に教わろう。

そう考えた私は、数百年にわたりヤスリを作り続けてきた職人のもとを訪ねることを決意しました。


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